菌根菌との相互作用が作り出す森林の種多様性(<特集>菌類・植食者との相互作用が作り出す森林の種多様性)
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概要
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森林生態系における植物の種多様性の維持には、非生物的要因(光環境や土壌環境)が大きく影響しており、この点を中心にそのメカニズムが説明されてきた。しかしながら、近年、植物の病原菌や共生菌がこの森林の植物群集に関与することが示されてきている。菌根菌は、植物と相利共生する菌の一つであり、菌根共生によって宿主植物の養水分吸収や耐病性、各ストレス(乾燥、塩類、重金属など)耐性が向上する。このような菌根菌の効果は宿主植物種によって異なるため、菌根菌が宿主植物の種間競争の結果を変え、植物群集に影響を与えうる。また、野外では同一クローンの菌根菌と複数種の植物が菌根を形成し、菌根菌の菌糸によって植物根が連結された菌糸ネットワークが存在する。菌糸ネットワークは、実生の定着に影響し、森林における植物群集に影響を与えている可能性がある。これらの影響を通して、菌根菌が植物種間の競争を緩和する場合には多種共存が促進され、菌根菌が優位種の競争力を高める場合には種多様性が減少すると考えられる。しかし、菌根菌が森林の種多様性に与える影響に関する研究は実生を対象としたものが大部分であり、草本と比べて寿命が長い森林生態系では、実生更新時の菌根菌の影響が成木の植生にどの程度寄与するのかについては不明である。従って、ミクロコズム実験と野外調査の結果を組み合わせて考察するなどして、今後、この点を明らかにしていく必要がある。
- 2011-11-30
著者
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