茅盾小説の世界構造 : 1930年代の都市・農村イメージ(<特集>都市と農村-文学テクストから読み解く)
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概要
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茅盾の『子夜』といくつかの短篇の関係は,司馬遷の『史記』を彷彿とさせる。『史記』においては,「本紀」が中心を占め,「世家」と「列伝」が「本紀」を取り巻いている。これと同様に,『子夜』は,1930年代前半の茅盾の小説世界において中心をなす。『子夜』において,茅盾は中国の大規模な描写を試みたが,彼の描写は大都市上海に限定されてしまった。彼の考えでは,経済が世界を動かし,経済は人々の運命に等しい。彼の関心は,経済の都市住民に対する影響から,農民への影響へと向かうことになる。農村三部作を書くことを通して,茅盾は農民の都市住民とは異なる特徴を見いだした。1930年代の経済危機の中,多くの農民は迷信に頼ることをやめなかったが,一握りの農民は経済という運命の桎梏から抜け出す。彼ら少数の農民はまさに「政治的人間」であり,「経済的人間」が運命に翻弄されるだけであったのと異なる。この発見は,茅盾の小説世界において画期的なことであった。
- 2011-11-25
著者
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