事業者向け融資の実際と展望(統一論題「パーソナルファイナンスにおける新たな挑戦」)
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概要
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・北海道拓殖銀行、大和ファイナンス、三洋電機クレジットという資金提供者側としての実務経験と、経営コンサルタントとして関わってきたベンチャー企業、中小企業という資金需要側の実態とニーズを把握している立場から、事業者向け融資の実際と展望を検証していくものです。・日本の企業総数は約421万社であり、そのうち約366万社(87.0%)が事業者向け融資の対象である小規模企業と個人事業主であります。この約366万社の資金繰りは貸金業法と割賦販売法の改正に伴い悪化して行っています。・規制強化による影響と実情は次のようになっていると考えられます。銀行→個人事業主・零細企業にはリスク回避のため資金供給を停止。貸金業者→貸金業者自身の資金調達難から対応が困難。信販・クレジット・リース会社→銀行系・商社系の傘下に集約化され、リスク回避が鮮明化。・規制強化による二つの破綻事例(1)印章彫刻器製造販売会社→リース審査厳格化の影響で販売不振となり自己破産申請。(2)店舗内装工事会社→信販・クレジット会社の与信厳格化の影響による個人消費減退による飲食店・小売店の売上減少と金融機関の審査基準強化による資金調達環境の悪化から、新規出店が激減となり民事再生を申請。・従来、貸金業者が対象としていた事業者向け融資市場へは、銀行を始めとした金融機関ではノウハウの蓄積がなく対応不能となっています。・規制強化による上限金利引き下げと総量規制の導入により、リスク圧縮とコスト削減という二つの大きな課題が横たわっています。不特定多数を対象としていた従前の手法ではリスクとリターンが合わず、提携戦略を取った新たな手法の開発が必要とされます。・事業者向け融資市場は、規制強化と国内景気の悪化という二つの障害がある状態となっていまが、一方で個人事業主・零細企業には資金調達に対する強いニーズがあります。既存の金融機関・ノンバンクは、当該マーケットに対しての与信機能を放棄しており、提携戦略等をとる新たなリスクテイカーの育成が求められています。そのためにも事業者向け融資に適応するような法整備が望まれます。
- 2011-07-20