教室における子どもの意味生成に関する一考察 : ヴィゴツキーのコミュニケーション論を基軸として
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概要
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本研究の目的は,教室における当事者たちの意味生成を彼らの内側から読み解く視点を得ようとすることである。本研究では,ヴィゴツキーのコミュニケーション論を基軸として,語義と意味の接触する「言語的思考」の動態において新たな意味が生成することを確認した。また,ブルーナーのフォークサイコロジーの観点から,ヴィゴツキーの分析単位を検討し,実証主義的な『真実』よりも当事者たちの日常に妥当する「もっともらしさ」から意味生成のプロセスを情動的に捉え返す必要を示唆した。そして,認知的な「言語的思考」と情動的な「間主観性」の往還から子どもの意味生成を捉えることを試みた。その結果,1)ある主体の意味生成のプロセスは,彼を取り巻く他者の意図や彼とその他者との情動的な関係を含めて捉えられる必要があったこと,2)認知的,情動的な転換が,与えられた教育的意図によって促進するとき,それに関与しきれない主体の想いを削ぎ落としてしまう可能性があったこと,3)当事者たちの「言語的思考」と「間主観性」の往還を,観察者である私の主観において捉えることで,(未だ)言語化されない意味が立ち上がろうとする地点が見出されることが明らかとなった。
- 2011-03-31