多面的な授業分析の開発的研究 : 「子どもによる授業分析」を通して
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概要
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本研究では,従来の授業分析をさらに発展させるため,「授業の事実の新しい意味の発見」(小川1971 23頁)に資する多面的な授業分析の提案を行う。ここでは,重松鷹泰(1961)以来の授業分析の方法を参考にする。具体的には,授業分析に新たな実施主体を加えることで,彼らによって認識される授業の事実に授業改善や教育学の理論の構築に向けた手がかりを得ようとするものである。筆者は,新たな実施主体として,学習者である子どもに注目する。本研究は「子どもによる授業分析」を通して,授業分析における子どもの視点を析出することが目的である。まず,本研究では「子どもによる授業分析」の方法の開発を行った。次に,小学校高学年児童を対象として,継続的に計3回「子どもによる授業分析」を実施した。これを踏まえ,「授業分析シート」への記述データに対してコーディングを行った。その結果,授業分析における子どもの視点が10個析出された。それらの視点は,記述対象の内容に着目する「内在的視点」と記述対象そのものに着目する「外在的視点」に大別される。さらに,「内在的視点」には,教師が「授業づくり」へ活用できる3つの機能があること,子どもが「再学習」するという効果があることが明らかとなった。一方で,「外在的視点」には,教師の授業観や子ども理解を深める2つの機能があること,子どもの「自己変容」につながる効果があることが明らかとなった。
- 2011-03-31