環境問題の捉えかたの世代間差異と子どものころの記憶
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概要
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現代の日本ではどのような環境問題が重視されているか,それは世代ごとにどのように異なっているか,そうした違いが生じるのはなぜか。本論文ではロジスティック回帰分析を用いて,ゴミ処理・処分場の問題原生林・湿地などの保全,原子力発電に伴う問題,遺伝子組換え食品の問題資源・エネルギーの枯渇という5つの環境問題のいずれを重視するかが,どのような要因によって規定されるか分析した。子どものころ注目を集めていた環境問題を現在でも重視しがちであるという「子どものころの記憶」仮説について検討したところ,10歳ごろに新聞で多く報じられていた環境問題と,現時点で重視する問題との間にゆるやかな対応関係が見られた。1950年代後半の原子力への注目を経験した50〜64歳世代が原子力問題を,1970年代のオイルショックを経験した30〜49歳世代がエネルギー問題を,1980年代末〜90年代初頭の自然保護ブームを経験した20〜24歳世代が保全問題を,それぞれ重視する傾向が見られた。学歴と環境意識,行政・科学技術への信頼と環境意識との結びつきかたにも,世代ごとに違いが見られた。たとえば,65〜79歳世代では高学歴の人がエネルギー問題を重視するのに対し,子どものころオィルショックを経験した49歳以下の世代では低学歴の人が重視するというねじれが見られた。
- 2008-11-15