企業の環境経営におけるISO14001「環境マネジメントシステム」の意義と課題 : 総合電機A社の一事業部を事例として
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概要
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近年,多くの企業により導入が進められているISO14001環境マネジメントシステムに関して,それが企業の環境経営に対してどのような機能を果たしているか,そのメカニズムを明らかにすることを試みた。本稿では企業の環境マネジメントシステムにかかわる要因連関をシステムと主体の視点から3レベルの枠組みに分け,(1)企業の環境マネジメントシステムの特徴とそれにかかわる主体(各階層)の意思決定や行為を規定した要因,(2)ISO14001制度の下での企業と審査機関の相互行為と,それが企業の環境マネジメントシステムに与える影響,(3)経済システムにおける他の主体に対する企業の認識と企業の環境経営戦略の関係を検討した。調査は総合電機A社の一事業部および審査登録機関を対象に行い,以下の結論を得た。すなわち,経営効率に適合的な環境保全活動の優先やイメージ先行の「環境適合製品」の開発といったEMSの取り組みは,環境市場をまだ不確実,未成熟とする経営者らの認識に基づく横並び,イメージ優先の環境経営戦略を反映したものと言える。同時に,低い目標設定や一部従業員による環境マネジメントシステムの運用効率優先の取り組みが一般従業員を傍観者にし,現状の追認につながっている。さらに,ISO14001の審査がシステム審査であることや,審査ビジネスにおける顧客獲得競争が企業に迎合した審査を生みやすく,それらが環境マネジメントシステムの運用効率優先を容認する結果を生んでいる。結果を基に,環境マネジメントシステムの進め方やISO14001制度に関して若干の提言を行った。
- 2007-10-31