しれとこ100平方メートル運動から世界遺産へ(<小特集>世界遺産)
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概要
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知床は,2005年7月に白神山地と屋久島に続いて国内三番目の世界自然遺産に登録された。知床が登録された用件は,知床が北半球における流氷の南限とされ,流氷とともにもたらされる大量のプランクトンを食物連鎖の基礎として,多種多様な生物が生息・生育する地域であること。さらに,シロサケやカラフトマス等が川と海を行き来し,これを餌とするヒグマなどの哺乳類やシマフクロウ,オジロワシ,オオワシといった絶滅のおそれのある猛禽類をはじめ海棲哺乳類や海鳥などを育み,北方系と南方系の動植物が混生するなど,海域と陸域の自然環境が密接に影響し合い,豊かな生態系を形づくっていることとされている。さらに,これらを適正に利用し,かつ保護するための原生自然環境保全地域,国立公園,森林生態系保護地域,国指定鳥獣保護区等の法による保護の網が幾重にも重なり合っていることも重要な要素となった。知床の世界自然遺産への登録は,しれとこ100平方メートル運動に象徴されるこれまでの地元による保全の取組みも大きな要素の1つとなった。しかし,知床が世界自然遺産として世界に認められるには,国際レベルの保護の体制整備や適正な利用の道筋を定めるなどの解決すべき課題も数多く残されている。
- 2006-10-31