コモンズと正当性(レジティマシー) : 「公益」の発見(<特集>環境をめぐる正当性/正統性の論理-時間・歴史・記憶-)
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概要
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本論の目的は,ある川で数百年来展開されてきた漁業と,それをめぐるコモンズを素材に,そを維持しようと奮闘努力してきた人々の歴史から,コモンズをめぐる正当性(レジティマシー)獲得の方法と,その変容過程について検討することにある。当該調査地において,近世には,支配権力とのつながりが具現化した納税の事実と,「旧例」という歴史を根拠とする正当性(レジティマシー)が,ムラによる川の管理・利用を支えていた。しかし,明治維新とともに,その正当性は実効力を失ったことにより,人々は新しい正当性(レジティマシー)を獲得しなければならなかった。そこで見つけ出したのが,「公益」や「資源保全」といった近代国家によって高く評価される新しい文言とコンセプトであった。それは,地域にとっては外部的なアクターである国家との接触によって発見された正当性(レジティマシー)であったが,いつしか内部的なコモンズの仕組み-共同体へのコモンズからの利益還元という方式-にまで影響を与えた可能性がある。村=ムラ=集落が,川を共同管理するというコモンズとしての川のあり方は,変化しつつも300年もの長きにわたり継承されてきたが,その継承は,自己の活動の正当性(レジティマシー)を,時々に応じて意欲的に獲得してきた人々のストラテジーと密接に関わっている。
- 環境社会学会の論文
- 2005-10-25
著者
関連論文
- 野中健一著, 『民族昆虫学-昆虫食の自然誌』, 東京, 東京大学出版会, 2005年11月, 202頁, 4,200円(+税)
- 松井健著, 『自然の文化人類学』, 東京, 東京大学出版会, 1997 年, 213 頁, 3,200 円
- コモンズと正当性(レジティマシー) : 「公益」の発見(環境をめぐる正当性/正統性の論理-時間・歴史・記憶-)