公論形成の場における手続きと結果の相互承認 : 長野県中信地区廃棄物処理施設検討委員会を事例に
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概要
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「公論形成の場」を豊富化することは,環境社会学研究における問題解決論の要とされてきた。そして固有のルールに則った討議と同意こそが合理的な基準を満たすという前提は,環境問題の文脈だけでなく開発援助の分野など,さまざま政策領域で力強い規範になりつつある。本稿が考察の対象とした「長野県中信地区廃棄物処理施設検討委員会」では,廃棄物処理施設の立地をめぐって,可能なかぎり科学的で客観的に判断するための合意形成ルールをつくり,不透明な意思決定プロセスを封じ込めることに成果を得た。しかし,どこかに処分場を建設するという結論は,手続き主義的な理念に則った討議にもとつくことで,「やむを得なさ」を正当化することになる。これに対し住民は,討議の過程で言語化できない生活実感や多様な解釈が成り立つような理念や責任をめぐる討議が脱政治化され均質化されることに対し違和感を表明する。すなわち,公論形成の場において,住民参加,情報公開,客観性,公平性といったキーワードによって了解された討議の帰結は社会的な拘束力をもつことになる。だからこそ,意思決定に際しある種の排除の論理が働くような問題をめぐっては,合理的な討議プロセスであっても,不公正を縮小するというよりも制度的現実を肯定するような結果が生じるのであった。
- 環境社会学会の論文
- 2004-11-30
著者
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