合意形成における環境認識と「オルタナティブ・ストーリー」 : 札幌市真駒内川の改修計画から
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概要
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環境問題の解決に向けて「公論形成の場」の設置が言われているが,場の設置やそこに参与する主体の議論だけでは解決しえない問題も指摘されている。その1つに,行政機関の専門知と住民の環境認識との構造的格差の問題がある。本稿は,行政と住民の間に専門的な知識に関する構造的格差があるなかで,住民がいかにして専門知に対抗していくのか,その方法を明らかにする。事例として,札幌市真駒内川の河川整備計画を策定する真駒内川対策協議会における住民の語りを取り上げ,専門知による理解と住民の環境認識に焦点を当てて分析した。真駒内川対策協議会では,落差工をめぐって,撤去を求める住民と行政が対立した。住民は,専門知を枠組みとした議論では行政に充分に対抗することができなかった。構造的格差が生まれるのは,専門知による議論の枠組みがあるためである。そこで,住民が主張を貫くために専門知とは異なる基準と根拠に基づいた主張がなされた。この主張は,記憶の中の「昔」など住民の環境認識に支えられており,専門知とは「切断」されていた。この語り方は,河川管理者の専門知による語り(ドミナント・ストーリー)に対抗して住民の意見を正当化する語り(オルタナティブ・ストーリー)と見ることができる。オルタナティブ・ストーリーは,専門知に対抗する力とこれを共有することで合意に導く可能性を有している。
- 環境社会学会の論文
- 2004-11-30
著者
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