国有林野における保護林制度の政策過程
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概要
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林野庁による1980年代後半の国有林野の保護林制度の変革は,森林生態系保護地域という森林保護区の導入によって,拡大造林政策に基づいた無秩序な自然林の伐採に一定の歯止めをかけるとともに,その後の環境保全を重視した国有林野行政への改革の転換点となった。この政策過程には,自然保護運動が積極的に関与し,自らが開催した「ブナ・シンポジウム」,行政が設置した林業と自然保護に関する検討委員会,各地域の森林生態系保護地域設定委員会において,行政に対して継続的に解決圧力を与え続けた。本稿は,制度変革への課題設定に大きな役割を果たした東北地方の事例を中心に,個別問題の解決と制度変革の両立を果たしたこの政策過程の担い手となった国有林野行政と自然保護運動との相互作用を検討するものである。分析にあたって,政策過程の各段階において形成された,問題をめぐって複数の主体が関与する取り組みの場としての「アリーナ」を取りあげ,政策過程に登場した複数のアリーナを「課題設定アリーナ」,「制度変革アリーナ」,「個別問題解決アリーナ」の3つに機能分類を試みた。これらのアリーナが連動して形成され,問題解決に寄与したが,それを可能にしたのは各アリーナで複数の水準の運動体が林野行政との勢力関係を均衡させるネットワークを結んでいたことが大きい。
- 環境社会学会の論文
- 2003-10-31
著者
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