住民投票と仮想市場法
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概要
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消費者へのアンケートを通じて環境資源に対する支払意思額を直接的に聞き出す仮想市場法(CVM)は,開発行為が招く環境破壊に伴なう損害費用や環境改善事業がもたらす社会的便益を定量的に把握するための手法として認知されているだけでなく,住民が環境やアメニティに対する選好の強度を表明するという形で環境行政や地域計画への公共的関与を促進する手段としての利用可能性が期待されている。NOAAパネルが示したCVM調査に関するガイドラインは,米国では日常的に住民投票が行なわれていることなどを理由に,価値評価の質問形式として住民投票方式を採用することを推奨している。住民投票の経験をもたない有権者が殆どである日本の場合,政策の賛否に対する投票行動のひとつとして,判断に迷った有権老が現状維持を支持して反対票を投じる可能性がある。このことから,住民投票方式を採用したCVM調査において,提示金額を受諾しない回答者が多くなり,結果として支払意思額平均値が低く表れることが予想される。本稿の分析では,これを支持する結果が得られた。以上の考察より,CVM調査での質問形式の選択において調査対象地域の社会経済的条件を考慮する必要性が示唆される。
- 2003-10-31