マイノリティを生みだす認識の社会的構造 : 拡声器騒音被害をめぐって
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では市街地で流されるBGMやマナー放送,あるいは防災無線放送などにより生じる拡声器騒音被害について考察する。拡声器騒音は主観的な被害現象であることから従来の工学的騒音研究とは異なる視点からの分析が必要となる。そこで,拡声器騒音問題を人々の拡声器音に対する意味づけの対立と捉え以下の分析を行った。まず拡声器騒音をめぐる言説を概観したところ,この問題が受容者=多数派/被害者=少数派という図式で認識されていることが確認された。次に防災無線に関する意識調査結果と街路に流されるBGMに関する意識調査結果を分析したところ,拡声器騒音被害についての人々の認識は音を肯定する人と音を聞いていない人を同一視し,音をうるさいと感じる人をマイノリティ化させることにより立ち現れていることが明らかになった。こうした分析をつうじて受容者=多数派/被害者=少数派という認識自体が被害を生みだしていること,そしてそうした認識を現出させてしまう不特定多数の人々に音を聞かせる行為自体の加害性を指摘する。
- 2003-10-31
著者
関連論文
- 「対立関係」をサウンドスケープデザインに位置づける (特集 現代社会とサウンドスケープ--人権としてのサウンドスケープ)
- 第2回座談会 音環境研究の現在と学融的連携を目指した対話 (特集 現代社会とサウンドスケープ)
- 新幹線騒音・振動による主観的健康の低下 : 騒音感受性を考慮した質問紙調査
- 新幹線振動対策制度の硬直性と
- 責任実践としての近隣騒音問題--「被害を訴えることの意味」の規範理論的考察
- 第3部 高尾山の価値をめぐって (特集 現代社会とサウンドスケープ) -- (平成18年度シンポジウム「天狗の聴いた音風景」--高尾山の価値をめぐって)
- 近隣騒音問題をめぐるコントローラビリティの諸相:公的介入の諸限界と被害者運動の可能性の検討を中心に
- 防災無線で流されている放送内容と市町村勢の関係について : 福島県におけるケーススタディ
- 街路に流されるBGMに対する人々の意識--福島市内におけるケーススタディ
- マイノリティを生みだす認識の社会的構造--拡声器騒音被害をめぐって
- 防災無線の社会的受容について : 福島県における防災無線の実態調査(2)
- 防災無線で流されている放送内容と市町村勢の関係について : 福島県における防災無線の実態調査(1)
- 110 地区に向けた放送に対する住民意識について : 福島県下の隣接した2地区のケーススタディ(環境騒音・振動の予測と制御)(振動・騒音制御技術)
- フィールドノート 拡声器騒音研究はどのように行なわれてきたか--1950年代前半における拡声器放送の社会問題化を中心に
- 国語辞書に見る「騒音」概念の変遷について
- 社会学的サウンドスケープ論は何を問うのか? (特集 サウンドスケープ(再)入門)
- マイノリティを生みだす認識の社会的構造 : 拡声器騒音被害をめぐって