「食と農の分離」における「専門家と素人の分離」(<特集>農と暮らしのディスクール)
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概要
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「食と農の分離」という問題意識を「文化的アプローチ」と「市場的アプローチ」として整理した上で,補足的なアプローチとして「科学技術」を社会的な構築物として問題化する視点を導入したい。フードシステムの諸主体が埋め込まれている文化的・認知的構造は,専門家の言説と実践のネットワークによってつくられているが,素人は疎外されている。このような対比を行う意味を,専門家によるイネゲノム計画と,素人市民を主役としたコンセンサス会議を事例に検討した。イネゲノム計画は,主に特許を「制御の概念」とする国家と企業の闘争として記述できる。しかし,それは素人市民の日常的な経験とは隔たっており,コンセンサス会議の参加者は,関連性の薄い出来事や言説を多様な形で動員していた。専門家の言説は,共通の価値をめぐる闘争の場に「埋め込まれて」いるのに対して,素人のそれは問題となる事象の周辺での「埋め込み」が希薄で紐帯も弱いことが示唆された。コンセンサス会議のような装置は,素人市民を専門家-素人境界を自覚し疑う主体へ変容させる可能性をもつであろう。
- 環境社会学会の論文
- 2003-10-31