エコ・ツーリズムの分析視角に向けて : エコ・ツーリズムにおける「地域住民」と「自然」の検討を通して
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概要
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「エコ・ツーリズム(Eco-tourism)」と地域住民の生活や文化との間には、その概念の生成過程から考えても密接に関係がある。実際、エコ・ツーリズムは「地域主体の観光」や「地域づくりにも結びつく」と評されてきたが、これまでの研究では、地域住民は「取り入れる」対象、「啓蒙」する対象とされ、地域社会の問題は「環境教育」や「住民参加」の問題とされている。そこでは、エコ・ツーリズムが導入される当該地域の生活の論理や文化、地域住民の主体性への視点に欠けている。それに対し本稿では、当該地域住民がエコ・ツーリズムという外部の枠組みを受けとめて自らの拠点から生活を組み立て、地域を再構築していく問題としてエコ・ツーリズムをとらえることを試みた。地域住民の生活という観点からエコ・ツーリズムの可能性を模索するには、エコ・ツーリズム研究における「自然」が問い直されねばならないだろう。エコ・ツーリズムの対象となる自然は、「保護地域」といった学術的に序列づけられた自然が中心であったが、自然は地域社会の社会的・歴史的構成物であり、人間と自然とのかかわりの歴史、人間と人間の関係の歴史が内包されている。「内包された自然」が研究者等によって「無垢な自然」や「消費する自然」とされるのがエコ・ツーリズムであるし、逆にその過程で地域住民が自然を対象化し、地域を再評価するともいえる。重要なのは、エコ・ツーリズムという社会関係のなかで、地域住民が、文化としての自然を「操作できる対象として新たに作り上げる」主体でありえるかどうかである。本稿では、高知県大方町の砂浜美術館の考え方と活動を事例として、この問題を考察した。
- 環境社会学会の論文
- 1999-11-20
著者
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