地域社会に経済を埋め戻すということ : 「琉球エンポリアム仮説」から地域通貨論へ(<特集>地域環境再生の社会学)
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概要
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ボーダレスな経済の拡大が、地域の経済と物質の循環を破壊し、文化と環境の世代間の継承を困難にしている。しかし、ボーダレスな資本と市場は、自己増殖の永久運動を続けることはできない。それがエントロピー論の結論であり出発点でもある。自然は無限ではなく、エントロピーを捨てる能力に限界があるからだ。問題解決の道筋は、地域経済の自立化に向かって「物質循環の作動力」の一つである経済の流れを、地域の物質循環を回復する方向へ戻していくことにある。そのような視点から、エントロピー論の議論のなかでは、通貨と物質の循環に着目して提起されてきた「地域通貨」論の流れが生まれている。すなわち、信用(通貨循環)をいかに地域に埋め込むかという議論である。この議論の流れは、玉野井芳郎によるK.ポランニー研究に始まり沖縄経験のなかでの「琉球エンポリアム仮説」「B円通貨論」の考察を経て、中村尚司の「信用の地域化」論へ発展し、その後の地域通貨論(丸山真人、室田武ら)へと展開されてきている。ここでは、エントロピー論における地域通貨論の原点とでも言うべき玉野井の沖縄の地域通貨論の視角から、戦後の沖縄経済の流れを整理し、ポランニーの言う「地域社会への経済の埋め戻し」の具体化の方法を模索した。すなわち、「信用」を地域通貨循環と非市場部門(コモンズの経済)へ埋め戻すことによって、地域経済循環を再構築しようという試論である。
- 環境社会学会の論文
- 1999-11-20