捕鯨問題における「文化」表象の政治性について
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概要
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本稿では捕鯨問題について、歴史-社会学的視点より考察を加えた。多様なクジラと「日本人」とのかかわりは、近代以降、拡張主義的方向性を背景とし、捕鯨業が一つの大きな産業として成立したことで、捕鯨というかかわりに単一化されていった。しかし、「捕鯨文化」を主張する人類学的研究は、日本の捕鯨擁護という政治的目的によりなされたため、上記の過程を無視または的確にとらえずに、捕鯨を実体化した「日本人」の「文化」であるとして正当化するという誤りを犯した。今後のクジラとのかかわりは、野生生物を守ることを基本姿勢とし、その上でかかわりの多様性を維持するという方向で検討されねばならない。その際には、国家・民族・地域を実体化しその「文化」であると表象して正当化すること、また逆に、「文化」と表象することである国家・民族・地域を実体化することは、慎重かつ批判的に考察されるべきである。
- 環境社会学会の論文
- 1998-10-05