村落共同体における環境管理 : 山林・水利慣行にみる共同体住民の環境への主体的な関わり
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概要
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共同体による環境管理については、おもに「生産」と「所有」について議論が行われてきた。しかし、生産ばかりでなく生活すべての舞台となるムラにおいて、人間と環境との関わりは、客観的対象としての土地を所有し、また利用するという一元的な関係にとどまるものではなく、むしろそこに生きる人間の存在の問題にまで関わるものとして捉えられるべきである。和辻哲郎が「風土」という概念によって分析したように、現実の世界では、客観的にそれ自体で存在する「環境」も「主体」もあり得ない。「風土」における環境と人間の関わり、それは自然環境と人間・文化、またそれをめぐる人間同士の関わりあいという複合的な現象である。村落共同体もまたこのような「風土」のひとつであるが、人々はそこでどのように環境と関わってきたのであろうか。水田耕作を営む集落では、農業活動の性格上、環境への働きかけは特に積極的であり、また計画的でもある。いわゆる「伝統的」な慣行として村落共同体において行われてきた山林および水利という環境への働きかけを通して、共同体の人々がどのように環境と関わってきたかを見ることによって、環境との関わりにおける人間の主体のありかたについて考えてみることにしたい。
- 環境社会学会の論文
- 1998-10-05