「リスク社会」の到来を告げる住民投票運動 : 新潟県巻町と岐阜県御嵩町の事例を手がかりに(<特集>環境運動とNPO(民間非営利組織))
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概要
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今日原発や廃棄物問題など特定の争点をめぐって、住民投票運動が盛り上がりを見せている。その背景には、これらの争点をめぐって立地点と全体社会の双方におけるリスク認識の高まりがあることが考えられる。それが立地点の地域社会に新たな亀裂や紛争軸を登場させ、地域住民が警鐘を鳴らすことによって、さらに全体社会にリスク認識が拡がっていく。しかし、ここで注意しなければならないのは、リスクの顕在化が階級や政治的イデオロギーによる従来の地域社会の亀裂構造を根本的に変化させたわけではなく、特定の争点をめぐって従来の亀裂を覆い隠すような、新たな「価値亀裂」を登場させている、という点である。それによって原発や廃棄物などの環境リスクをめぐる問題は、旧来の保守対革新の構図にとらわれず、住民投票などを通じて地域住民一人一人に自己決定を迫る問題として現れる。またこうしたリスクをめぐる運動においては、その担い手としてしばしば新中間層や女性が注目されるが、高い動員力をもたらすためにより重要なのは、「旧中間層を含む地元の保守層」なのである。
- 1998-10-05
著者
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