森林からみるコモンズと流域 : その歴史と現代的展望(<特集>コモンズとしての森・川・海)
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概要
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世界の森林利用・所有の展開は、工業化以前の段階の多様な利用とコモンズ的所有から、工業化段階の木材生産への特化と無規制の私有を経て、木材生産以外の機能の重視と規制された私有の方向をたどるとされる。また、産業社会の行きづまりによって、工業化以前の段階にみられたエコシステムや相互扶助を重んじるコモンズの経済が見直されはじめている。このような点をふまえて、日本における森林利用・所有と流域、コモンズの関係について縄文時代からの歴史をたどるなかで、つぎのような点が明らかになった。(1)中世後期から近世初期にかけてオープンアクセスの状態からコミュナルな入会林野が成立し、近世中期以降の商品経済の浸透と近代の入会林野解体政策によって、木材生産中心の利用と近代的な所有に置き換えられていった。とくに、高度経済成長によって、入会林野の多様な利用とコミュナルな社会は衰退して、その形骸化を招いている。(2)近世にはコモンズに支えられた「流域社会」によって、河川は多様な形で利用されていた。近代以降は国家の主導によって河川の利用は単純化するとともに、高度経済成長によって「流域社会」は解体した。(3)1970年頃からは自然保護運動の影響によって森林政策が転換し始めた。さらに、1980年代後半からは地球環境と地域活動が注目され始めるなかで、自然と人間との関係を重視するような考え方が台頭してきた。そのような現状のなかで、森林を舞台としてコモンズや流域を見直そうとする地域の動きがいくつかの地域でみられるようになっている。
- 1997-09-20
著者
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