コモンズの利用権を享受する者(<特集>コモンズとしての森・川・海)
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概要
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かつての共有地研究や入会研究と異なり、コモンズという概念は自然と人間とのあいだの関係の持ち方を考えさせる契機を与えてくれる。つまり、よりよい自然環境・生活環境構築への模索の機会である。したがって、本稿でもコモンズという用語を使う限り、具体的な「環境戦略」を示したいと考えたが、それは戦略といえるほどのところにはたどり着いていないかも知れない。本稿においては、ムラの所有論を分析することを通じて日本のコモンズには伝統的に「弱者生活権」という権利が存在しつづけたことを指摘した。より具体的には、その権利はいままで思われていたような温情ではなく、所有論からみた権利として存在するのである。すなわちコモンズの存在理由としてそのようなものがあったわけだから、われわれがコモンズ分析を通じて将来へ向かっての環境論を再構築しようとするときには、単なる「共同の利用権」という理解を越えてこの点への配慮が必要だろう。また、コモンズを前近代的な消え行くものとは理解しないで、農業にたずさわるその生産の構造がコモンズの存在と有機的にからんでいることをも指摘した。ムラ内部での生活と労働のあり方を検討しないで、ムラの周辺に広がる森や山や川や海の分析をしてもその研究の成果には限りがあると思われる。
- 環境社会学会の論文
- 1997-09-20
著者
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