社会学とエコロジー : R.E.ダンラップの理論の検討
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概要
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アメリカでは、エコロジカルな世界観や倫理の重要性が、多くの環境社会学者に認められている。だが、彼らの多くは、既存の社会学の枠組みを保持したまま、社会現象の説明に「自然環境」という新たな変数を追加しようとしたにとどまっていると言わざるをえない(満田,1995)。これにたいして、ダンラップ(Riley E. Dunlap)は、「エコロジカルな制約が人間社会にも社会学のディシプリンにも重要な問題を投げかけている」(Catton and Dunlap,1978:44)ことを指摘し、科学における社会学の位置づけをも再考するように提起するのである。すなわち、環境社会学は、エコロジーの視点をとりいれることによって、「環境」そのものを対象とする新たな枠組みを持たなければならないというのである。アメリカでは、このダンラップの主張を否定する環境社会学者はほとんどいないという(Buttel、1987)。しかしその一方で、環境社会学は、研究対象のとらえかた、すなわち「環境」という対象を社会学に組み込むことがはたして可能なのかどうかという基本的課題を解決することができず、未だに議論が続けられているのである。本稿は、「環境」そのものを研究対象にすることによって、アメリカの環境社会学がいかなる問題に直面してきたのかを、ダンラップの記述を主な手がかりに整理・分析する試みである。特に、ダンラップがエコロジーを導入しようとしたときに直面した矛盾に注目することによって、社会学における自然環境の位置づけについて、理論的な水準で再検討してみたい。
- 環境社会学会の論文
- 1996-09-20