TV-CMの商品想起を高める表現手法の要因 : 再認実験に基づく商品映像の技法比較(情報デザイン)
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概要
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TV-CMの制作者が意図した表現手法は、どのように生活者の商品想起に影響しているのだろうか。これまで、TV-CMの表現に関する研究は、主に広告効果の視点からなされてきたが、TV-CMは時代の社会的風潮を反映するせいか、情報学や人間工学などの研究者の研究対象にもなっている。しかし、一方で表現に携わる制作者からの研究報告がなされていない。制作者の生成・制作過程における創作意図を検証することは困難とされてきた。本研究の目的は、TV-CMの制作過程において、どのような表現手法が、商品想起に効果的か明らかにすることにある。一般的に映像の最小単位はショットだが、TV-CMは、短時間の中に情報を凝縮するコミュニケーションメディアであるため、ショットの中にさらに細分化された技法を用いることが多い。その一つに、ショットの導入にエフェクトをかける技法がある。ここでは商品外観映像における導入技法に注目して、これらの技法が商品想起にどのような影響を与えているのか、認知心理学的な記憶実験を試みた。実験では、ショット冒頭から変化のない(1)フィックスタイプ、導入部で映像にかけるエフェクトのうち代表的な導入技法(2)フェイドインタイプ、(3)ワイプインタイプを選び、合わせて3種類の導入技法を比較材料とした。それぞれ映像の長さは導入のエフェクトを含め、1秒間とした。実験の結果、素朴で単純な導入技法である(2)フェイドインタイプが、より長い時間商品が提示される(1)フィックスタイプより、商品想起において有効であることがわかった。この結果は、フェイドインタイプが、ショットの導入部分では商品を隠しているにもかかわらず、商品想起において有効であることを示唆している。さらに、(2)フェイドインタイプが、技巧的な導入技法の(3)ワイプインタイプより、商品想起において有効であるということがわかった。どちらの導入技法も、導入部分の半秒間で商品を隠したところから、序々に商品が見えてくるという点で共通している。この2タイプの導入技法の違いは、映像上の暗部と明部の境界にある。一般的には、技巧的で印象の強いエフェクトの方が好まれるが、ここでは逆の結果であった。
- 2010-09-30
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