音声のリズムとタイミングにおける位相と協調運動の役割について(<特集>リズムとタイミング)
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概要
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音声をはじめとする複雑な運動行動を理解するためには,その行動を構成する個々の運動の相対的なタイミングを把握する必要がある。そのような複雑な協調運動(coordination)の記述には,力学系(dynamical systems theory)が提供する概念や道具立てが適している。中でも「位相」(phase)の概念は,事象の相対的タイミングを表すのに中心的な役割を果たす。本稿では,位相が協調運動を捉えるのに有用であることを,音節や句の反復発話,手の運動,複数の話者が発話をシンクロナイズさせる同期発話,調音音声合成など,様々な具体例を用いて例証する。さらに,周期的・等時的な運動だけでなく,非周期的・非等時的な協調運動についても位相の概念を適用できることを示す。これにより,一話者内の運動の相対的タイミングだけでなく,複数の話者による運動の相対的タイミングも,協調運動に関する同一の枠組みで捉えることが可能となる。
- 2009-12-30