A.マーシャルの有機的成長論における経済騎士道と生活基準の役割
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概要
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アルフレッド・マーシャルは,経済学者の目指すべきメッカは経済生物学にある,と述べた。経済生物学とは何か,という問題を本稿で詳しく取り扱うことはできないが,筆者は,マーシャルが考えていた有機的成長論というものが,経済生物学の核になるということを明らかにしている(Yamamoto and Egashira 2012)。本稿は,有機的成長論を構成する概念をさらに掘り下げ,それを理解するのに重要な,経済騎士道と生活基準という二つの概念に焦点を当てたものである。これまでの研究においては,それぞれの概念が個別に取り扱われることはあっても,それらの関係性についてはほとんど注目されることがなく,マーシャルの経済学体系において重要視されてこなかった。本稿においては,経済騎士道は経済の進歩に,生活基準は人間の進歩に重要な役割を果たすものである,と捉えており,さらにこれら二つは相互依存の関係にあり,二重らせんの構造になっているとマーシャルが考えていたことを明らかにしている。このように捉えることで,経済と人間の共進化を軸とする有機的成長論についても理解することができるのである。
- 2011-12-08