新羅の始祖神話と日神信仰の考察 : 三氏(朴・昔・金)の始祖説話と娑蘇神母説話を中心に
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概要
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本稿は古代新羅の始祖神話と日にっしん神信仰の考察である。古代の韓国には壇君(タングン)神話・朱蒙(チュモン)神話などの建国の始祖神話が多くあるが、これらの神話も視野に入れて、本稿ではまず、新羅の始祖と見なされている、朴・昔・金という三氏の始祖神話の特性を分析している。高句麗の始祖神話には、東北アジアの民族に特徴的である日光感精説話が見られるが、新羅の三氏の始祖神話にはこれが明確には現れていない。新羅では日神信仰は日光感精などの神話よりも海洋型・水平型の太陽崇拝にその源泉を有する傾向が強い。その意味では三氏のうち昔氏の脱解(タルヘ)神話に最も多く日神信仰が反映しているように思われる。しかし三氏の神話は新羅の始祖神話の全体像を構成しているとは言えない。これに、赫居世(ヒョッコセ)やその王妃閼英(アリョン)を生んだとされる、慶州の仙桃(ソンド)山(西岳)の神、娑蘇(サソ)神母説話ないし神話と、延烏郎(ヨノラン)・細烏女(セオニョ)説話とを加えて総合的に考察することによって、初めてその全体像を知ることができるであろう。本稿では娑蘇神母に特に注目し、まず新羅の始祖女神としての神母を『三国史記』(12世紀。本稿では「國」はすべて新字体に直した)と『三国遺事』(13世紀)に則して取り上げ、その後で、中国の伝説上の神仙である西王母に娑蘇の神話的ルーツを探っている。なお延烏郎・細烏女説話については紙幅の制約があり、後日の発表を期すことにした。