イギリス学校自律化政策の展開と課題
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概要
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本研究は、1980年代以降のイギリスにおける学校自律化政策の展開と課題の考察を目的とする。学校に裁量・権限を持たせ自律性を期待する学校経営改革は、一見、教育に関わる裁量を学校に渡すように見えるが、思うように機能していない。そのため政策展開を捉える視点を再構築し、学校経営改革の分析視点を提示する必要がある。本稿はその前提として政策展開・特徴と課題の考察を行う。具体的には、1970年代後半以降、学校が教育水準向上を図る「変革の基礎単位」として位置づけられ、アカウンタビリティが要求され、学校組織・学校経営のあり方が政策的に問われたことを分析する。さらにその背景にある政治改革原理(NPMと「過度の管理主義(managerialism)」)の検討から、学校への包括的統制メカニズムと具体的改革の特徴を考察し、学校自律化政策の意図を明らかにする。政策は分権化推進や官僚的形式主義打破を狙う一方で、学校はより一層の官僚主義を感じている。その原因を確認し、過度の統制とリーダーシップ・マネジメントの過信の問題性と意図せざる結果を生み出す仕組みを分析する。改革の問題は学校の教職員の役割を過少評価し、個別学校のやりくりの余地を制限している点である。一方で、改革が要求していることを必要最小限行っているだけではなく、矛盾した構造下において学校で教職員がどのように働いているかを捉えていくことの重要性について基礎的考察を行う。
- 2011-02-28
著者
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- 上田学著, 『日本と英国の私立学校』, 玉川大学出版部, 2009年