森林樹木の遺伝的多様性保全と生態リスク(<特集>我々は「生態リスク」とどう向き合うのか?)
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概要
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森林伐採、過度の開発、大気汚染や気候変動などの人間活動により世界中で森林の生物多様性が脅かされており、近年、生物多様性の基盤となる遺伝的多様性の保全の必要性が広く認識されるようになった。長い寿命・世代時間、高い集団内の遺伝的多様性、花粉および種子を介した高い遺伝子流動能といった樹木固有の特徴により、環境変化による樹木集団の遺伝的多様性への影響は小さいという指摘がある。これは樹木の遺伝的多様性保全における生態リスクの影響は小さいことを意味するかも知れない。しかしこの仮説に当てはまらない事例も多い。そこで本稿では1)森林の分断化、2)地球温暖化による分布シフト、3)樹木の種苗移動・保全単位に着目し、各項目について森林樹木およびそれを取り巻く生態系へのリスクについて、保全遺伝学の視点から最近の事例研究を紹介しながら概観したい。
- 日本生態学会の論文
- 2010-11-30