血、民族、神 : 初期マルティン・ブーバーの思想の展開とそのユダヤ教(Judentum)理解の変遷
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概要
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本稿はブーバーの一九一六年頃までのテクスト(政治論文・神秘主義研究・哲学的エッセイなど内容的、文体的に多岐に及ぶ)を丹念に追うことで、彼のユダヤ教理解の変遷を跡づける。当初ブーバーはユダヤ教を「民族」と理解し、血縁主義的、人種主義的に規定した。しかし、ユダヤ人としての自意識やユダヤ人として生きることへの決断といった実存的契機が重視されてくるにつれ、「民族」や「血」といった概念はユダヤ教理解の中心から退いてゆく。その後彼はユダヤ教を宗教的なものととらえるようになり、神を中心とする一神教的な世界秩序を受けいれるようになる。これらの変化は突然起こったわけではなく、小さな思想的、政治的態度決定の集積として漸次的に起こった。このような思想の揺動は、直接的には彼に毀誉褒貶相半ばする評価をもたらしたが、それぞれの段階で彼が示した見解は、二十世紀初頭におけるユダヤ人の自己理解をめぐる議論にたたき台を提供し、同時代のユダヤ人に極めて重大な影響を与えた。
- 2011-06-30
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