安定同位体温度計 : その温度以外の効果について(2004年度日本地球化学会賞受賞記念論文)
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概要
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半世紀以上も前に創設されて以来,安定同位体地球化学の中心概念である同位体温度計は,他の効果(圧力,流体組成,生物効果等)についても絶えずためされて来た。1950年代前半に(炭酸鉱物古代温度計が始まった直後)水溶液中の溶存塩が同位体分別に影響すること(同位体塩効果)が発見されたにもかかわらず,特に高温における同位体塩効果が良く理解されるまでには,何十年も待たねばならなかった。サブダクション・ゾーンやマントルにおいてその効果が大きい可能性があるにもかかわらず,同位体分別における圧力効果はいっそう難問であった。1990年代では,同位体分別における塩効果や圧力効果を理解する上で非常に重要な実験的・理論的な進展が見られた。高温(>100℃)における塩効果についての論争はついに解決がついた。温度200℃〜600℃と0.8GPaまでの圧力領域で含水鉱物と水の間のD/H同位体分別係数が圧力に依存することも立証された。鉱物と水それぞれにおける圧力効果に関する理論的な成果が出たのも同じ時期であった。最後に,驚くべきことに高温(750℃)・高圧(1.5GPa)において,溶存している鉱物そのものが同位体分別に大きく影響することが発見された。本論文では,これらの温度以外の効果に関する研究の進展を特に過去十年を中心にして歴史的に振り返ってみる。
- 日本地球化学会の論文
- 2005-12-26