摂食障害にて発症した統合失調症症例(シンポジウム:摂食障害と併存する精神神経疾患,2010年,第51回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(仙台))
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概要
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摂食障害の統合失調症の合併例の報告は少なく,全体の0.4%といわれている.実際臨床の場面では,重度で難治な症例において統合失調症の合併が疑われることが多い.今回,われわれの施設において経験した,摂食障害症状にて発症したが後に統合失調症の確定診断に至った症例に関し検討し報告する.方法:対象は2004年4月〜2009年12月の期間,北里大学東病院精神神経科の摂食障害専門外来へ紹介受診となった症例のうち,統合失調症の合併と考えられた12症例である.典型的な摂食障害の症状にて発症し,後に統合失調症の症状が顕在化したもので,発症初期には統合失調症の診断はつけられなかった症例を検討の対象とした.初期診断の内訳は,神経性食欲不振症制限型(AN-R):5例,神経性食欲不振症むちゃ食い排出型(AN-BP):4例,神経性過食症(BN):3例であった.結果と考察:AN-R,AN-BP,BNいずれの症例も,発症初期よりわれわれの施設で経過を追っている7症例は,摂食障害発症から1〜2年で統合失調症の確定診断がついた。いずれの症例にも共通しているのは,薬物療法によりある程度の精神症状の安定が得られていること,社会適応のレベルが通常の摂食障害に比べ不良であることが挙げられた.入院治療においては精神症状を評価して治療方法を検討する必要があり,統合失調症が疑われていても肥満恐怖などの強迫的なこだわりや過活動が伴う場合は摂食障害としての治療の考え方を優先すべきであると考えられた.また,ささいな刺激や環境の変化でも不安感などが出現しやすく情動不安定さがみられるのが共通した傾向であった.典型的な摂食障害の症状を呈しているが上記のような傾向をもつ患者の場合は,精神病症状の出現に留意しながら積極的に薬物療法を導入してよいであろう.
- 2011-07-01
著者
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