教育格差是正に向けた乳幼児発達支援の実践 : 発展途上国の教育開発と幼児教育(<特集>幼児教育の社会学)
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概要
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近年,幼児教育に対する関心は,先進国のみならず途上国においても高まっている。特に,1990年以降,途上国においては乳幼児人口の増加はほとんどないにもかかわらず,就園者数は著しく増加している。1990年のEFA宣言においては,幼児教育が基礎教育の一部として位置づけられ,そこでは,とくに恵まれない子どもたちに対する支援が強調された。また,世界銀行やユニセフなどを中心に,開発や人権などの観点から乳幼児の発達に対する総合的なアプローチが進められるようになった。しかしながら,サハラ以南アフリカなど,幼児の健康などにおいて特に恵まれない地域ほど就園率が低いという厳しい現状がある。このような幼児教育の国家間格差は,その後の教育達成度とどのような関係にあったのか,検証を行なった。具体的には,各国の就園率とEFA第5学年到達率とがどのような関係にあったのかを検証した。クロスナショナル分析の結果,就園率は,5年後の第5学年到達率と強い関係にあり,その関係は,一人あたりのGNPや教育財政支出を統制しても有意に残ることがわかった。国家間の格差のみならず,国内格差も深刻な問題である。本稿ではベトナムを例に国内格差を分析した。国内格差と初等教育段階での学業達成およびその格差との関係を見ると,地域の経済状況や初等教育の質を統制しても就園率と学業達成,就園率と学業達成格差との間には有意な関係が残るということが明らかになった。最後に,本稿でのテーマと日本の教育社会学との接点についても触れた。
- 2011-06-10
著者
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