経済成長戦略として注目される幼児教育・保育政策 : 諸外国の動向を中心に(<特集>幼児教育の社会学)
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概要
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本稿では,諸外国において,幼児教育・保育政策に関して,特に経済的な観点から,近年どのようなことが議論され,具体的にどのような施策が講じられているのかを紹介し,日本の幼児教育・保育政策の今後のあり方について考える。諸外国では幼児教育・保育政策が,女子差別撤廃条約や児童の権利条約など,女性や子どもの人権に関する国際的な議論を受けて見直されていることに加え,少子高齢化に伴う労働力不足に対して,女性労働力の活用が求められていること,社会保障費用の負担増に対して,子どもの貧困や教育格差が問題視されていること,就学後の教育の効率性を決めるのは就学前の教育にあるという研究成果が注目されていることなどから,経済成長戦略の一環としても注目を集めている。具体的な改革として,幼児教育・保育政策を救貧的な福祉制度体系から,人的投資を意識した教育制度体系に位置づける国が増えているほか,保育の質を高めることにも力を入れる傾向にある。公的投資の効果を意識した様々な工夫も見られ,保護者が自ら共同運営する施設や祖父母が保育する方式を積極的に活用したり,家庭や地域に対する働きかけを重視したり,保護者の労働時間短縮を進める動きなどが見られる。日本で目下検討されている幼保一体化を含む「子ども・子育て新システム」についても,人道的観点に加え,経済成長戦略の一環としての検討を加えることが期待される。
- 2011-06-10