自然環境に対する協働における「一時的な同意」の可能性 : アザメの瀬自然再生事業を例に
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概要
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環境問題の解決には,地域住民,行政,専門家,NGOなどの多様なステイクホルダーが参画し協働する必要があることは数多く指摘されてきた。しかし,こうした協働はそう簡単ではない。環境社会学では,自然環境についての価値づけが多様であることが明らかにされており,それを尊重しつつ,自然科学において明らかにされてきた不確実性をはらむ自然環境の動態に対応する方法については,まだ議論がはじまったばかりである。本稿では,そのことを踏まえ佐賀県アザメの瀬で行われている自然再生事業を事例にしながら,「一時的な同意」による,多様な価値づけが行われ不確実性をはらむ自然環境をめぐる協働にむけた合意形成の可能性と課題について考察を行う。「一時的な同意」に基づく同床異夢的な協働は,明確な合意形成の内容や時期を設計しにくく,また,いつ矛盾が発生するかわからない緊張関係をつねにはらんでしまうという点で,従来のイメージの政策の実現プロセスとしては位置づけにくい。しかし,多様な価値づけが行われ不確実性をはらむ自然環境に対する協働を考えると,「一時的な同意」を繰り返し,あえて同床異夢を許容していくことは,多様な価値を尊重しながら,自然環境の動態の不確実性にも対応していける可能性をもっており,今後の政策の実現プロセスや,市民参加のあり方を考えていくうえで有益だと考えられる。
- 2010-11-10
著者
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