災害研究のアクチュアリティ : 災害の脆弱性/復元=回復力パラダイムを軸として(<特集>「災害」-環境社会学の新しい視角)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では,人文社会科学の立場から災害研究に関してこれまでどのような問題関心のもとに研究がなされ視野が広げられてきたかをレビューし,現在の段階でどのような研究の視点を重視しようとしているかを紹介しようとする。ここでは,中心的な概念として副題にもあるとおり,「災害の脆弱性」概念をとりあげ,その歴史的な蓄積過程や変動過程に注目するとともに,社会構造や政治経済的な支配構造などとの影響関係を概念枠組に取り込む試みを紹介した。そのうえで,脆弱性の概念では捉えきれない部分を補充・補完する意味で,「復元=回復力」概念を提示しその意義を論じている。社会構造と社会的脆弱性との関係に着目する上記の分析枠組は,環境社会学でこれまでとりあげてきた被害構造や環境正義などの問題とも結びつくと同時に,日常的な生活の営みや環境の変化を辿ろうとする点で生活環境主義などとも関心を共有する側面がある。とくに,「復元=回復力」概念は,災害と共存してきた地域の歴史や文化を掘り起こし,生活再建に向けた人びとの活動に注目することで,災害に強い社会を構想しようとする社会的営為にフォーカスを当てようとしている点て,生活環境主義やまちづくり活動へのアプローチと多くの共通点を有する。このような災害と環境の複合的な問題系は,自然と社会の関係の変化についての新しい洞察を含む,包括的でダイナミックな理論構築を要請しているといえよう。
- 環境社会学会の論文
- 2010-11-10
著者
関連論文
- 自主防災の課題と展望 (特集 阪神・淡路大震災--10年を振り返って)
- 鈴木広編『災害都市の研究 : 島原市と普賢岳』
- 西山八重子著『イギリス田園都市の社会学』
- 災害のリアリティと想像力の--自主防災活動の活性化をめざして (特集 自主防災(1))
- 船橋晴俊・長谷川公一・畠中宗一・梶田孝道著「高速文明の地域問題」
- 高度情報化の進展と都市構造 (都市と情報) -- (都市と情報の問題研究)
- 災害研究のアクチュアリティ : 災害の脆弱性/復元=回復力パラダイムを軸として(「災害」-環境社会学の新しい視角)
- 都市生活と不安 : 阪神・淡路大震災後の社会過程と社会問題の発展
- 都市構造のパズルを解く最前線
- 災害の脆弱性とリジリエンス・パラダイム : 社会学の視点から(第1部 リジリエント・ソサエティとは,東日本大震災1周年 リジリエント・ソサエティ)