誰が優秀な人材なのか? : 日系ものづくり企業の台湾マネジメントと「セカンド・ベスト・プラクティス型」人材活用
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概要
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一般的に、「優秀な人材」といった場合、高い野心を有した即戦力となるベスト・プラクティスな人材を指し、彼らを総称してエリートと呼び、「高い野心をもった即戦力となる者」=「有能な人材」という図式が成り立ちやすい。しかし、果たして日系企業における「優秀な人材」とは、いわゆる高い野心をもった即戦力となる人材のみを指すのであろうか。組織のシステムが違えば、当然それぞれの組織システムにとって「優秀な人材」の意味内容に違いがでてくる。「優秀な人材」とは一義的には、定義し得ないと思うのである。本稿では、小池の「日本企業の人材形成」、加護野の「些細なチェックシステム」、藤本の組織能力とアーキテクチャの議論を手掛かりに、台湾日系ものづくり企業で働く長期勤続マネジャーの証言から、日本企業における「優秀な人材」とは、高い野心をもった即戦力となるいわゆるエリートと呼ばれる人材ではなく、むしろ企業の中で「優秀な人材」とは醸成されていくものではないかという点を指摘しようとしている。台湾日系企業では、「優秀な人材」といわれる、高い野心を有した即戦力となるエリートではなく、日系企業のなかで独特に働く「暗黙知(tacit knowledge)」を積極的に獲得した現地人従業員であり、彼らが結果的に「優秀な人材」として日系企業経営の中核となる仕事を任されることになるのである。まさに、台湾日系ものづくり企業のなかでは、グローバルスタンダードとしていわれている「ベスト・プラクティス」な人材活用がおこなわれているのではなく、むしろ結果的に企業内部に残った人材を活用していくという「セカンド・ベスト・プラクティス」型の人材活用がなされている。本稿は、そのことを、台湾日系ものづくり企業で働く長期勤続マネジャーと日本人駐在員の語りから明らかにしようとするものである。
- 2010-09-30
著者
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