衛星都市の水道事業における水源確保 : 兵庫県宝塚市を事例に(<特集>水資源・環境政策と地域社会)
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概要
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京阪神大都市圏の衛星都市である兵庫県宝塚市を事例に,水道事業の展開とその要因を明らかにした.とくに,多様な水源開発の背景と,農業水利組織や水道用水供給事業との関係性に注目した.宝塚は明治中期以降に温泉観光地,郊外住宅地として発展し,私設水道が多数敷設されていた.1950年代前半に,宝塚市の母体となる二つの村に公営水道が敷設された.1954年に合併で宝塚市が成立すると,公営水道と私設水道の統合が進められた.1960年代前半は人口急増で水需要が増大し,水源が増強された.水源はおもに浅井戸や灌漑用水からの分水に求められたが,下流域の農業水利組織との交渉と補償が必要であった.水源に問題が起こると,表流水の無許可取水が行われた.他市からの分水や深井戸も水源とされた.1960年代後半から70年代前半にかけての人口急増による水需要に対して,ダムを水源とする県営水道用水供給事業からの受水に求めることとなったが,その建設が延期されたため,独自にダムを建設するなどして対応した.新たに深井戸水源も増設されて水源に余裕ができ,県営水道用水供給事業からの受水は延期された.1990年代前半以降も人口の漸増が続くが,水需要は停滞・漸減傾向にある.県営水道用水供給事業からの受水が開始され,受水量が増加されてきた.列島渇水時にはダム水源からの供給が制限された.近年の少雨傾向や施設の老朽化のため,受水量の増量や受水先の複数化などによる水源の安定的確保が課題である.
- 2011-03-30
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