摂食・嚥下障害を呈した症例に対する長期的介入の効果
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概要
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摂食・嚥下機能は,単なる口腔機能の問題に留まらず,上肢機能や姿勢調節機能といった高度な運動機能や,認知機能など様々な機能が複雑に関与している。そのため摂食・嚥下機能に対するリハビリテーションは難渋することが多く,長期的な介入が必要となる。しかし近年の医療情勢としては入院日数の短期化が進み,長期的に関わり難い状況にある。それらの背景としては長期的介入に伴う,治療効果の検証が不十分であることが推察される。今回,脳幹出血を伴った摂食・嚥下障害を呈した50代男性に対して,比較的長期間にわたり作業療法を実施することが出来たので報告する。作業療法実施前の状態は,摂食・嚥下障害を呈し,誤嚥性肺炎の既往により臥床傾向にあった症例のADLは全介助であった。食事形態は昼のみ嚥下困難食であったが,朝・夕は胃瘻にて栄養摂取していた。目標は,症例および家族の強い希望であった食事の自己摂取の獲得とした。治療内容は,食事の自己摂取の獲得に向け,(1)機能的座位姿勢の獲得を図り,続いてスプーン操作の獲得を目的に(2)右側上肢の操作性の向上を図り,さらに安全な嚥下を目的に(3)手と口の協調性の向上を図ることの3つに段階づけて,食事の自己摂取の獲得を目指した。結果, ギャッチアップの角度が60度から90度に,食事時間が60分から40分に,FIM(食事)が1/7点から3/7点に変化していた。即ち,今回のように回復期以降に関わり始めた症例においても,抗重力位が保てるようになり,食事時間が短縮され,介助量も軽減し,食事動作能力の改善が認められたといえる。近年,脳血管障害等のリハビリテーションの算定日数の上限により,長期的な介入が難しくなりつつある中,本症例のような回復期以降の患者に対するリハビリテーションの効果の検証を重ね,その重要性を証明していく必要があると考える。
- 2009-12-20