コンポジットレジン仕上げ研磨表面の評価
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
歯冠修復材料であるコンポジットレジンの仕上げ研磨後の表面性状を評価し,得られた結果から臨床的な評価と一致する評価法を見いだすことを目的として実験を行った.この目的のため,フィラー組成ならびに粒子の大きさの異なる5種類のコンポジットレジンを選択した.すなわち,マイクロフィラー型コンポジットレジン(以下,MFRと略す)1種類,サブミクロンフィラー配合型コンポジットレジン(以下,SFRと略す)1種類,ハイブリッド型コンポジットレジン(以下,HYBと略す)3種類の合計5種類を実験に供した.MFRタイプとして前歯部用のSilux plus(以下,SILと略す),SFRタイプとして前歯部用のPalfique Estelite(以下,PAEと略す)を用いた.また,前臼歯部両用のHYBとしてClearfil AP-X(以下,APXと略す),Z250,およびTPHスペクトラム(以下,TPHと略す)を使用した.測定は,研磨条件として研磨紙の粗さを#320〜#2000まで5段階に変化させたときのコンポジットレジンの表面粗さおよび光沢度を測定した.次に,表面粗さと光沢度の関係を明らかにするために両者の測定値について相関を調べ,回帰式を求めた.さらに,各コンポジットレジンについて研磨紙の粗さ#2000での最終研磨状態の表面性状をSEM観察し,表面粗さ,および光沢度の結果と比較検討した.その結果,以下の結論を得た.1.コンポジットレジンの種類および最終仕上げ研磨紙の粗さによる表面粗さに差が認められた.すなわち,MFRのSIL,SFRのPAEとHYBのAPXの表面粗さが小さく,HYBのZ250,TPHの表面粗さが比較的大きかった.仕上げ研磨紙の粗さが小さくなるにつれて,すべてのコンポジットレジンで表面粗さが小さくなる傾向を示した.2.コンポジットレジンの種類により,仕上げ研磨による光沢度が異なることが認められた.すなわちMFRおよびSFRは,研磨紙の粗さが小さくなるに従い急激に光沢度が増加した.HYBのAPXとZ250は,研磨紙の粗さが小さくなるに従い光沢度は増加するが,その程度は小さかった.HYBのTPHは,研磨紙の粗さが小さくなっても,光沢度の増加はわずかであった.3.表面粗さと光沢度の相関および回帰分析を行った結果,強い負の相関が認められ,累乗の曲線回帰式であった.これより,表面粗さが大きい領域での評価は,表面粗さが適しているが,表面粗さの小さい領域では,光沢度による評価のほうが適していることが明らかになった.4.SEMの観察では,MFRやSFRのコンポジットレジンで滑沢な表面が観察された.以上のことにより,臨床応用時にコンポジットレジンの最終仕上げ研磨状態を評価する際には,表面性状は仕上げ研磨を順次行うことによって表面粗さが小さく滑沢な状態になっているため,表面粗さではなく,光沢度で評価するほうが良いことが示唆された.
- 2011-02-28
著者
-
石川 明子
日本歯科大学附属病院 総合診療科
-
石川 明子
東亜大学 工学部 生命科学工学科
-
石川 明子
日本歯科大学歯学部歯科保存学講座・附属病院総合診療科(保存修復学分野)
-
丸山 慶四郎
日本歯科大学歯学部歯科保存学教室第II講座
関連論文
- オフィスホワイトニングの臨床評価 : ピレーネとハイライトの比較
- P-58 視感比色法による天然歯のシェードテイキングにおける検討(臨床応用, 第49回日本歯科理工学会学術講演会)
- Megafillerを充填したコンポジットレジンの重合収縮挙動
- Megafillerを充填したコンポジットレジンの耐摩耗性
- LITE-FIL P^の臨床応用における予後について
- 日本歯科大学附属病院 総合診療科 ホワイトニングチーム
- 本学附属病院における取り組みと実態
- コンポジットレジン仕上げ研磨表面の評価
- 研究室紹介
- コンポジットレジン仕上げ研磨表面の評価
- 審美的な色調の改善を訴える患者への対応
- ホワイトニングの臨床術式 : テクニックと評価方法(ホワイトニング)
- ホワイトニングの臨床術式 : テクニックと評価方法