マレーシアのエコツーリズム : マレーシア森林研究所における取り組みを事例に
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概要
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マレーシアは東南アジアの熱帯域に位置し、マレー半島とボルネオ島の一部から成り立つ国である。マレーシアには、多様な生命が何億年もの時間を費やし、多様で繊細な種間関係を築き上げた極めて複雑な熱帯林が存在している。この熱帯林はマレーシアにおける最大の魅力の一つであり、これらを活用して、熱帯林やそれに関する文化を体験できるようなツアーが数多く実施されている。一方で、20世紀後半に多くの森林が大規模なアブラヤシプランテーションに転換され、残された森林も孤立しつつある。多くの原生の熱帯林が失われた現在、部分的に残されている森林を保全し、持続的な方法で利用していくことが求められている。本稿では、マレーシアのエコツーリズムに関する動向とともに、具体例として首都クアラルンプール近郊にあるマレーシア森林研究所(FRIM)におけるエコツーリズムへの取り組みを紹介する。マレーシアは1996年に策定された「国家エコツーリズム計画」の下で、いくつかの行政部局が積極的にエコツーリズムを推進している。特に豊かな自然が残る地域では外国からの観光客の獲得へむけた取り組みがあるものの、多くの森林公園は現地の住民の憩いの場として利用されていた。FRIM では1929年から人工的に再生された森林において、キャノピーウォークウェイ(Canopy walkway:林冠回廊)やネイチャートレイル(Nature trail:野外散策路)等を整備、運営している。利用者数は現地の住民が最も多いが、一定数の外国人観光客もガイドを伴って訪問している。一方で、利用者は増加傾向にあり、これらの自然資源を持続的に利用するためには、オーバーユースを避けるための取り組みや、質の高いガイドを育成し活用するためのシステムが必要と考えられる。
- 2010-03-30
著者
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沼田 真也
Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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沼田 真也
Department Of Biological Sciences Tokyo Metropolitan University