amiksaとpayasya : 古代インドの発酵乳加工
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概要
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Veda文献に見られる乳製品の多くは,発酵乳dadhiを基に加工される.祭式の供物としては,samnayya,amiksa,payasyaが代表的発酵乳製品であり,何れもdadhiと加熱乳分srtaとを混ぜて作られる.BOHTLINGK-ROTH,RENOUなどはこれら(特にamiksaとpayasya)を同義語とするが,その根拠は明らかではない.本稿は祭式文献に基づき,これらの異同の解明を試みる.(1)samnayyaは新月祭においてIndraに捧げられる.準備日(upavasatha)の晩に搾乳・加熱・凝固剤atancana添加によって作られるdadhiと,翌朝の本祭日に搾乳・加熱したsrtaとを,献供の直前に混ぜる.混ぜた直後に献供する為,乳酸菌の作用は目視可能な程度ではなかったと考えられる.(2)amiksaはCaturmasya祭等で用いられる,samnayyaと同様に用意されたdadhiを,加熱中のsrtaに混ぜる.この時,酸と熱とによってタンパク質が凝固し,水分が分離する.カテージチーズのような凝固物がamiksaである.(3)payasyaはamiksaと同じ搾乳や調理法で得られる.また,Yajurveda の brahmanaには,両者を一つの議論の中で同義語のように言い換える例が見られる.また,同じ祭式の同じ神格に対する供物を黒Yajurveda学派はamiksaとし,白Yajurveda学派はpayasyaとする.両者が異なる乳製品をそれぞれ供物として用いていたとは考えにくい.従って,payasyaはamiksaと同じ,カテージチーズのようなものであると考えられる.(4)Veda文献全体の用例分布から,古い時代にはamiksa-が用いられ,次第にpayasya-の用例が多くなるという傾向が見られる.一つの乳製品がamiksaとpayasyaという2つの名称で呼ばれていた背景には,祭式文献の成立史と祭式の整備化または発展段階が影響した可能性がある.
- 2011-03-25
著者
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