パンデミックBCPにおける被害予測の難しさと結果事象の必要性(<特集>事業継続計画(BCP)とOR)
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概要
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2009年4月の発生以降,世界で猛威をふるった豚インフルエンザH1N1は,それまで心配されていた強毒性鳥インフルエンザH5N1が変異したものとは違い,その毒性による直接的な被害が企業や行政機関などの事業活動に著しい影響を与える事態には至らなかった.しかし,強毒性を想定してBCP(事業継続活動)を策定していた組織の中には,自宅待機命令や,出張・社内会議の中止など,対策の内容が実際の深刻さとはかけ離れたものとなり,急きょBCPの見直しを行ったり,「強毒の場合」「中毒の場合」「弱毒の場合」など,複数のパターンを想定してBCPを策定し直す組織も登場した.ところで,強毒にしろ,弱毒にしろ,結果事象という観点から見れば,組織の何人が欠勤,あるいは出社できないか,業務に携われないかということに集約される.リスクアセスメントとしては,業務に携わるスタッフのうち何人が仕事に従事できなければ,業務にどのような影響がでるかを分析することで,最大許容停止時間と,欠勤者数の相関が明らかになる.感染症は,一般的な致死率・感染力に加え,年齢や持病,過去の病歴やワクチン接種の有無などによっても健康被害の度合いが異なるため,予測はきわめて難しい.毒性に応じた計画だけでなく,もう1つの視点として,結果事象を併せ持つことが企業・組織の事業継続力を高める上では必要ではないか.
- 2011-03-01