フェイ・ウェルドン『魔女と呼ばれて』に見る女性の身長の文化的理想
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概要
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身体を生物学的な所与としてだけでなく、社会・文化的な構築物ともみなす近年の思潮は、身体を社会における種々の規範や権力関係を読み込むことの可能なテクストとして前景化することになった。こうした観点から見れば、1980年代に出版された小説フェイ・ウェルドンの『魔女と呼ばれて』で、度重なる美容外科手術を施される女性主人公の身体は、現代社会におけるジェンダー規範や位置を表すものとなる。さらに主人公の手術の決断が、自身が長身であることに動機づけられているという設定は、女性の理想的な体型を規定する文化規範の反映と言えるが、この点についてはこれまでほとんど関心が払われてこなかった。本論はウェルドンの主人公の体型に焦点を当て、身長を低くするための施術を、女性の身体規範の(再)生産として意味づける。