中国華南,インドシナ地域における労働力移動,交通インフラ整備と発展の分岐,収束(<特集>アジア経済成長のダイナミズムをさぐる)
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概要
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今日,アジア地域をはじめとする新興国の発展が著しい.しかし他方でこれらの国でも発展が目覚ましいのは,一部の中核都市に限られ,各国内部には大きな地域間の発展格差が存在する.それでは一般に途上国の発展は,地域間格差の拡大をもたらすのであろうか,それとも縮小をもたらすのであろうか.また,今後発展は周辺地域へと波及していくのであろうか.この点について,『世界開発報告2009』では,一般に地域間格差は経済発展の進行につれ,「まず分岐し,その後収束に向かう」という説を展開している.しかし,各国個別に観察を行うと,こうした分岐・収束のパターンには多様性がみられ,必ずしも各国の発展水準に対応したものとはなっていない.それではこうした多様性は,何によってもたらされたのであろうか.これについて,この論文では,中国華南からインドシナにかけての地域を事例に,各国内部の地域間労働力移動の流動性と,近年この地域で急速に進む陸上交通インフラの整備に着目し,地域間比較をおこなった.その結果,これら地域で中核地域から周辺地域へと発展は確実に波及し拡大大都市圏が形成されつつあること,また遠隔周辺地域においては,発展は空間的に一様にではなく,交通・物流の結節点など特定地域に集中的に起こっていることがわかった.
- 2010-12-30