米粉利用の現状と米粉研究(第39回 近畿作物・育種研究会 公開シンポジウム 自給率の向上に向けて-近畿の現状と今後の課題-)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
米の消費拡大をめざす取り組みとして,米粉利用が注目されている.米粉食品のなかでも,認知度が高まっているグルテン添加米粉パンに適した米粉の特性や品種の検討を行っている.製粉方法が異なるさまざまな米粉を原料として,グルテン添加米粉パンを作り,パンの膨らみ程度を比較したところ,グルテン添加米粉パン用の米粉は粒子が適度に細かく,損傷デンプン含有率が低いことが望ましく,粒度分布や損傷デンプン含有率が米粉品質の指標として活用されるようになっている.また,中程度のアミロース含有率(15〜20%)の米粉がモチモチ感と適度な軟らかさをもつパンを作るために最も向いていることや,穀粒が軟らかい粉質米はデンプン損傷含有率の低い米粉を作りやすいことなどが明らかになるなど,グルテン添加米粉パンに向く特性をもつ米に望まれる特性が明確になりつつある.さらに,タンパク質含有率やタンパク質組成と,製パン特性などの関連も明らかにされていくことで,風味や食感,保存性などが優れた,よりよい品質の米粉パンができるようになるであろう.また,飼料米などの多収性米の中には,良質な米粉パンを作ることができるものもあり,多収性米を活用することにより原料米の安価で安定的な供給が可能であると考えられている.今後,米粉利用をより拡大していくためには,米粉需要をさらに創出していく必要があり,パンだけでなく,麺や洋菓子などの用途に応じた米粉の加工適性の検討が不可欠である.
著者
-
荒木 悦子
農業・生物系特定産業技術研究機構近畿中国四国農業研究センター作物開発部育種工学研究室
-
荒木 悦子
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構近畿中国四国農業研究センター米品質研究近中四サブチーム
関連論文
- 小麦加工食品からのDNA抽出法およびDNA断片化程度の評価
- プロテオーム解析による小麦品種判別技術の開発
- 米粉利用の現状と米粉研究(第39回 近畿作物・育種研究会 公開シンポジウム 自給率の向上に向けて-近畿の現状と今後の課題-)