市場における「子供の発見」 : 子供のためのデザインの成立とその背景に関する一考察(1)
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概要
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欧米と同様,近代日本においても消費経済が発達し,その市場が拡大されていく過程において,デザインの多様化,差別化が起こっていった。この中で子供というテーマもまた,消費の対象として,その存在を「発見」されることになる。明治末期から大正期にかけて,子供のための商品が市場にあふれていったが,そこには企業の経営戦略が色濃く反映されており,例えば百貨店の勃興期にあたる明治末期においては三越呉服店が,また銀座が繁華街として発展した大正後期には資生堂が,それぞれ子供用商品の販売に取り組んでいた。この2つの企業での子供を対象にした活動を考察した結果,双方において,児童研究,自由画教育運動など子供への関心の高まりに着目し,積極的に児童文化活動を展開させて,店のイメージ作りに利用していた事実が認められた。これにより,ひとつのデザインの差別化が行われるには,様々な社会の意識が関与していることが明らかにされるとともに,消費文化の発展過程を,考察対象時期において再確認することができた。
- 日本デザイン学会の論文
- 1995-05-31