子どもの絵に探るデザインの可能性
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概要
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私たちの心に疎外感をもたらし,私たちを取り巻く環境を破壊した技術社会をデザインしなおすために,私たちの裡なる自然に眼を向けてみたい。子どもの絵は,混沌と秩序とを未分化に内在させながら,裡なる自然を生き生きと表出している。子どもの描画は,発達によって三つの段階に分類できる。まず,身体運動に基づいている「本能期」。次に不可思議なかたちで描かれる「未分化期前期・後期」。そして子どもの絵の最終段階である「視覚再現期」である。本論「未分化期・後期」では,子どもの描く人物像に焦点をおき,子どもの描画の核となる基本的なかたち「まる」の重要さを発見した。無意識のうちに自らが生み出す宇宙に,すべてを注ぎ込む子どもたち。大人の概念に束縛されず,自己分裂さえも平気な子どもたちの感覚的概念とでも呼ぶべきものが,高度に細分化した現代社会をもう一度,総合的にデザインする際の鍵となってくれるように思われる。
- 日本デザイン学会の論文
- 1994-09-20