SPS2000の送受電技術総論
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概要
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本報告書第1章の長友論文で強調されているように,SPS2000は太陽発電・マイクロ波送電という,当初現実味が無いと思われていたコンセプトを,手が届く所に示したことに最も重要な意味がある.全体の総括はそこに譲るとして,SPS2000プロジェクトにおけるマイクロ波の送電と受電の検討を振り返ってみよう.この分野においては,アンテナ,マイクロ波アンプ,マイクロ波整流それに電波伝搬(主にプラズマ関連)の問題がある.これらはSPS2000プロジェクトにおいて,最も集中的に検討がされた分野のひとつである.マイクロ波送受電に関する概念設計の要点は,以下のようになろう.(1)マイクロ波電力伝送用の周波数は,2.45GHz(電波法で産業・科学・医療用として割り当ている)とする. (2)マイクロ波増幅器として,半導体素子を用いる.1素子当たり入力6W,出力4Wであり,総計225万素子を用いる. (3)送電アンテナ(スペーステナ)として,面積が132m×132mのフェーズドアレーを用いる.図1に衛星構体へのアンテナ装着状況を示す.その構成素子としては,図2に示す共振器付きスロットアンテナを用いる. (4)送電ビームを受電点に正確に向けるため,レトロディレクテブ機能が検討された.図3はシステム構成を示し,245MHzを用いている.この実験システムは,800MHzで作られた. (5)受電アンテナ(レクテナ)として,線状放射器で給電したメッシュ反射鏡アンテナを用いる.反射鏡の下の地面には太陽光が照射され,自然のまま使用することができる.直径はノミナル2kmである.図4は,その1パネル分の構成を示す.SPS2000の概念計画書が完成した後も,より深い検討が続けられた.科学研究費(重点領域)申請のため,次の2シンポジウムを開いたのも,その一環である. (i) SPS用送受電技術シンポジウム(1994年11月14日) (ii) SPS用半導体シンポジウム(1994年11月28日) これらのシンポジウムでも,次のようにいくつかの重要な結論が導かれた. (a) マイクロ波増幅素子としてSi-MOSFETで,出力100W程度,電力変換効率50%程度が可能であることが示された.[1] (b) 地上のGa(ガリウム)の生産量は,500トン/年程度である.GaAs素子を用いて100万kWのマイクロ波を発生させようとすると,これでは不足をきたすことになる.従ってSi(シリコン)で大出力マイクロ波増幅器を作ることは不可欠である.[2] (c) SPS2000システム以外の一般用の送電アンテナとして,直径10m程度のパラボラを最密充填形に配列したアンテナが提案された.[3] また大電力のマイクロ波ビームが伝搬することにより,ビームは電離層プラズマと非線形結合して,種々の不安定現象を引き起こす.この現象について,計算機シュミレーションが行われた.この他,1素子当たり100W程度の高周波電力(2.45GHz)を整流できる半導体素子が必要であるが,現在の技術では実現されておらず,かつ従来のSPSの中でも検討はされていない.SPS2000は,既存の技術と近い将来実現できる技術を前提として,ひとつのシステム像を示してくれた.今この成果を踏まえて,システム実現に向けて,新たな歩みを始める時が来ている.今の成果を踏まえるということは,本報告書第1章にも述べられているように,そのシステムコンセプトを墨守すると言うことではない.技術は日進月歩し,かつ周囲条件は変化している.それに合わせて旧コンセプトを手直し,新コンセプトに仕上げていく努力が必要である.この新たな検討は,かなり根本的な見直しを含む可能性もある.それに伴って,マイクロ波送受電技術の所要機能・性能も,大幅に異なって来よう.例えばSPS衛星を置く軌道は,SPS2000ではLEOであるが,GEOという解も考えられないわけではない.そうすると,SPS電力供給装置と地上電力網との接続は良くなるが,反面マイクロ波送電アンテナは1桁程度大きい直径が必要となる.また実際にアンテナを製作しようとすると,素子製作法や収納・展開法について検討すべきことは,多々ある.今回のSPS2000シンポジウム成果報告書第2章の中では,まず伊藤教授が,SPS2000全検討期間を通して進めて来た研究の内容について総括している.次に川崎教授がシステム構成について,SPS2000に含まれていない新しい方向を示す研究について述べている.これは平板構成に適したパッチアンテナを用いて,分配器や増幅器を基板毎に形成し,最終的に送電ユニットを多層構成とするものである.これら2つの論文内容はいずれも,世界に対し独自の研究成果を主張できるものである.
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