病院CRMの成功要因に関する研究
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概要
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本稿は,一般マーケティング分野で幅広く受け入れられてきた顧客関係管理(CRM)概念及び実行戦略を医療サービス分野へ適用するという目的のもとで行われた.そのため,本稿では,医療サービス機関のCRM努力がCRM成果に影響を及ぼすに際し,媒介役割を果たす変数を確認し,病院の特性に適合するCRMシステムを構築・運営するための示唆を得ようとした.具体的には,CRM成果に影響を及ぼす変数を把握し,この変数により構成された仮説を提示するために,関係マーケティングを取り扱った様々な先行研究を検討した.まず,関係や関係マーケティングに関する研究を検討し,医療マーケティングと病院CRMの特性や意義について述べた.次に,CRMの実行と成果に影響を及ぼす主要変数のうち,信頼とコミットメントが関係品質を構成するものとしてみなした後,CRM活動を事前活動と事後活動とに区分し,この活動が関係品質たる信頼とコミットメントへ影響を与えるものとして設定した.また,信頼とコミットメントがCRM努力と成果の間を媒介するものとして仮説を提示した.病院CRMの試みの中でも,事前活動を通じて潜在顧客に信頼を構築できることが期待され,事前活動の一環として医療サービス関連情報を事前に提供することも重要と考えられる.また,CRM事前活動により患者の知識レベルを向上させるための努力は,医療スタッフとのコミュニケーション・レベルを高め,患者の満足度向上に貢献することが予想される.